日本教育再生機構は10月22日、六本木ヒルズ・ハリウッドプラザ5階ホールにおいて「教育再生 民間タウンミーティング」を開催しました。全国から各界の有識者や教育関係者、保護者ら約700人が参加し、安倍政権の教育再生政策に期待する声や抜本的な教育改革を求める発言が相次ぐなど、会場は熱気に包まれました。 
 
当日はテレビ・新聞などマスコミ関係者も数多く取材に訪れ、民間タウンミーティングへの関心の高さがうかがわれました(産経新聞10月23日付記事〈Web版はなし〉、産経新聞10月30日付記事、朝日新聞記事、共同通信配信記事北海道新聞日本教育新聞11月06日記事教育新聞11月09日付記事、など)。
 
冒頭、日本教育再生機構の顧問に就任した屋山太郎氏が開会の挨拶を行い、八木秀次理事長から日本教育再生機構の正式発足の報告のあと、ジャーナリストの櫻井よしこ氏をはじめ各界の代表からの提言、一般公募で選ばれた市民からの発言などが続き、活発な討論が行われました。
 
 
山谷えり子氏(内閣総理大臣補佐官)より会場に寄せられた祝賀メッセージ

 教育再生民間タウンミーティングin東京が、教育行政にかかわる皆様や教育改革に高いご関心をよせていただいている多くの皆様のご参加のもと、盛大に開催されますことを心よりお慶び申し上げます。
  「美しい国、日本」を創るために、次世代を背負って立つ子どもや若者の育成が不可欠です。子どものモラルや学ぶ意欲が低下している昨今、子どもを取り巻く家庭や地域の教育力の低下も指摘されております。
  教育の真の目的は、志ある国民を育て、品格ある国家、社会をつくることでございます。
  家族、地域、国、そして命を大切にする、豊かな人間性と創造性を備えた規律ある人間の育成に向け、教育再生の船はすでに出航いたしました。
  多くの国民の期待をうけ、今般内閣に発足した「教育再生会議」では、すべての子どもに高い学力と規範意識を身につける機会を保障するために、公教育を再生します。学力の向上については、必要な授業時間数を十分に確保し、基礎学力強化プログラムを推進いたします。
  また、教員の質の向上に向け、教員免許の更新制度の導入や、学校同士が切磋琢磨して、質の高い教育を提供できるよう、外部評価を導入いたします。
  航海は太陽の光がふり注ぐ穏やかな日々だけではございません。嵐の日も暗黒の海に臨まなくてはならない時もあります。政府もしっかりと舵をにぎり、クルー全員が一丸となり目的地まで進んでまいりますので、
国民とともに皆様のお力添えを賜りますよう宜しくお願い申し上げます。  

 
 
【開会の挨拶】
 
タブーなき議論を
 
日本教育再生機構顧問 政治評論家
屋山太郎氏
 
 昔、中曽根内閣の臨時教育審議会を私もお手伝いしたが、何も得るものはなかった。振り返ってみると応援団が全然なかった。臨教審は文部官僚と文教族にいいようにされてしまった。今度は安倍総理が教育再生を真正面に掲げて、山谷えり子さんを責任者に良い陣容を作った。しかし、文教族の方からも「党の方にも作る」と言って足を引っ張る構えだから、これは我々も色々と発信していかなければいけない。日本人の共同の精神、連帯の意識と言うか無私の精神、これが今日に至る日本を作り上げてきたのだが、これが近ごろ底抜けになっている。教育委員会や日教組の問題など、このさい、あらゆるタブーなしに教育再生の問題を議論して、ことあるごとに政府にぶつけていきたい。
 
 
【主催者代表挨拶】
 
「教育再生民間タウンミーティング」 開催の趣旨
 
日本教育再生機構理事長 高崎経済大学教授
八木秀次氏

  現在、緊急を要する教育課題が山積している。急激とも思われる学力低下、大人・子供を問わずの規律の喪失は、いまや我々が肌で感じられるレベルになった。いじめは深刻化し、その解決に学校・教育委員会はなす術もない。学校への不信、公教育への不信感が高まっており、ここは改革を教育関係者だけに任せるのではなく、これを民間の立場で何とかできないか。民間の様々な団体や、個人が緩やかに手を結び、具体的に教育の現状を明らかにしながら改善の代案を示そう。こうした思いの中で「日本教育再生機構」の構想が打ち立てられ、幸いにして多くの団体や有識者に賛同していただいた。
 
  偶然にも安倍政権の重要政策に「教育再生」が掲げられ、その内容も私たちの構想と多くの点で共通点が見られた。私たちは安倍政権が大胆な教育改革を行うにあたり、抵抗勢力になるのは文部科学省や教職員組合など、いわれる教育関係者だと考えた。事実、現在その兆候が現れている。

  官邸主導の教育改革で官邸を孤立させてはならない。民間が支えなければならないが、政府にはまずは国民の声を聞いて欲しい。民間の教育再生に向けての期待と、何とかして欲しいという切実な声を官邸に届けたい。そして政府の議論を民間からリードしていきたい。それが「教育再生民間タウンミーティング」を開催する理由である。
 
 
 
【第一部 提言T 各界代表からの提言】
 
教師力の向上に向けて
 
日本教育再生機構代表委員 全日教連委員長
三好祐司氏
 
 私たち「全日教連」と「日教組」、共産党系の「全教」といった団体との違いは、ずばり自分たち教職員をどう捉えるかにある。「全日教連」は自らを「教育専門職」と捉えている。それに対して「日教組」や「全教」は倫理綱領の中に「労働者」であると明記する。この点が私たちと決定的に違う相違点である。何も私は「労働者」が悪いなどと言っているのではない。しかし子供たちの教育に直接あたるものが、自分たちの権利を主張し、労働者としての権利の主張に重きを置きストを行う、あるいは選挙カーに乗って選挙活動をする。教育者が法律違反を平気で行う。国を敵と捉え、国旗・国歌を否定する教育を行う。こんなことが子供の目の前で繰り返されていて良いのか。

 日本人として教育をどうするのか。子供たちの魂をどうゆり動かすのか。この思いなくしては、真の教育などできようはずはない。教育は子供たちや保護者から尊敬と信頼の上に成り立つものであり、どんな改革を行おうと、結局は直接指導にあたる現場教職員の質が問われてくる。これから先、教育をより良くしようと本気で考えるならば、人格の優れた、教職員としての力量を高めようとする意欲的な人間を、どれだけこの学校現場に確保できるか、ここを押さえることなくして教育の再生はない。
 
 
保護者として望むこと
 
(社)全国高等学校PTA連合会 前会長
渡邉綾子氏
 
 3年前、高校2年生の子供を持つ親を対象に「将来我が子になってもらいたい理想の大人像」とのアンケートを行ったところ、将来我が子には、思いやりのある優しい人間、そして欲を言えばリーダー、指導的な立場に立って欲しい、と親たちは答えた。しかし「そのために何が必要か」と問うと、公平性であるとか正義感に○をつけなかった。ちょうど45、50ぐらいの年齢の親たちが、子供の将来に関して公平性や正義感を全く必要と思っていない。私は愕然とした。子供を真に本当に優しい人間、指導的な立場にしたいというなら、優しさは強さでもあるし、公正性や正義感もなければならない。

 全国の高校2年生ぐらいを対象に、男の子のグループ、女の子のグループに合計で50回ぐらい会う機会があったが、男の子でも女の子のグループと同じ空気が漂っている。男の子に「男の匂い」がしなくなっている。「これは下手をしたら国が危ういぞ」という感覚を持った。全国を歩いて挫折をした子供たちの親とも数多く会ったが、その親たちにも似たような、同じ空気を親も持っていることが分かった。この問題は非常に深刻であり、母性や父性を正しく教える教育が必要ではないか。
 
 
地域の教育力向上のために
 
(社)明石青年会議所第45期理事長
小川洋次郎氏
 
 平成13年の「明石祭り歩道橋事故」で、子供9名を含む11名の方が亡くなるという痛ましい事件が起った。こうした事件が起こった町は一体どうなるか。まず、実行委員会の音頭を取っていた市行政が組織崩壊した。上司と部下、部署と部署、行政内部に不信感が募り、治安は悪化した。ひったくり、車上荒らし、強盗殺人、暴力団関係者が学生をリンチし、警察が見過して死に至った事件も起こった。市民は市行政にも警察にも大きな不信感を抱き、自治体の行事やお祭りはほとんど休止、再開のめどは全く立たない状態になった。
 
 当時私は生まれ育った明石を思い、半ば自分の使命のように明石祭りの再開を決心した。遺族の方に直接お会いし、決意をお伝えし、私が明石青年会議所の理事長を務めた平成16年、行政と警察と市民が力を合わせて明石祭りが復活した。遺族と行政の関係も和らぎ、慰霊碑が完成し、町の安全に対する熱心な警察の取り組も功を奏し、犯罪・交通事故・交通違反は激減した。この体験から愛郷心なき故郷は崩壊することを痛感し、明石青年会議所は「郷土を愛する心」「家族を愛する心」「宗教的情操」を重んじた事業を展開するようになった。

 本年は「つかみ取れ、そして感じよう明石の心」と題して、小学生四、五、六年生を対象に一泊二日の合宿を開催した。子供たち全員が魚を取る漁を体験し、豊漁のお祭りを行い、自分たちで料理した。食べる前に「いただきます」の意味、「命をいただくからいただきますなんだよ」と説明すると、ほとんどの子供が理解した。合宿二日目にご来光を拝んで播磨・明石に伝わる神話を読み聞かせると、神々について何も知識のない子供たちが、たった一泊二日の研修で神々や家族、自然に素直に感謝できるようになった。

 これまでの教育では子供たちの精神的な拠り所とするには限界がある。学習指導要領にある愛国心にふさわしい教育や道徳的な情操教育を教育現場でも是非行ってほしい。また、教育委員会にも私たち青年会議所が行う事業をよく理解して協力していただきたい。
 
 
教育の民営化を目指して
 
(社)全国学習塾協会副会長
伊藤政倫氏
 
 昨年内閣府が行った保護者アンケートによると、「現在の学校教育に満足か」と問うと「満足している」「非常に満足している」の数が僅か12%だった。教育内容の難易度では「易しい」と感じている保護者が約7割、「今の現行の学習指導要領の内容が最低基準(ミニマムスタンダード)としたらどうしますか」という問いには、「もっとレベルを上げるべきだ」が63%。「学校と学習塾のどちらが学力向上に優れていると感じますか」の質問には、「どちらかと言えば塾とか予備校の方が力をつけている」との答えが73%。それに対して「学校の方だ」と答えた方は僅か5%だった。7割以上の方が学校より学習塾を頼っていることについて私どもは正直に驚いたし、その責任の重みを強く感じている。

  今、日本の教育で深刻な問題は学力低下であり、学校で教える内容がどんどん減っている。昭和43年、団塊の世代が中学生の時には53個の化学式が教科書に載っていた。ところが現在の教科書はたったの6個、実に9分の1。さらに英語の教科書で、同じく昭和43年の中学の時には、必修の英単語が610語あったが、現在ではたったの100語、ちょうど6分の1になっている。その結果、英語に関して語学能力を測るTOEFLというテストでは、アジアの30カ国の人たちの平均で日本は何と第29位。もうほとんど同点ぐらいで北朝鮮が30位。これだけ科学技術が発展し、豊かな日本の子供たちが、あの貧困にあえいでいる北朝鮮の子供たちと同じ学力レベルとは驚くべきことだ。

  「ゆとり」などと言って週に二回も休んで、内容の少ない練習をして世界に勝てるはずがない。「生きる力をつける」という目標もあるが、学校五日制でそれが本当に養われるのか。学校五日制もほぼ四年たちましたが、あの制度によって子供たちに幸福が訪れたわけではない。むしろ教育問題として語られていた「ゆとり教育」が、じつは単に一般公務員と同じように週に二日休みたいという労働問題だった、ということがはっきりした。

  「社団法人全国学習塾協会」は、東京の江東区をはじめ、一般の公立小学校へ塾の先生の派遣、そして提携事業を昨年度から進めている。いわゆる塾の先生が学校に行って、塾のノウハウを提供させていただいてお見せする。もちろん結果は大変好評でして、江東区だけではなく東京都内では足立区、港区も塾と提携したいとの申し出が続々とある。子供たちに分かりやすい教育をしようと思ったら、学校と塾が一緒に提携していくべきだ。私たち塾の先生は本当のノウハウをもっているが、それは我々が優れているからではない。我々は結果を求められており、結果を出すため必死で邁進している。塾に通っている日数はたかだか週に一回か二回、しかも二時間程度。学校のような昼間の朝から夕方までの時間で場所もあり、そして能力のある人材も揃っているのにどうしてできないのか。ここのスピリットが、塾と学校の先生方との違いではないか。
 
 
教育荒廃の原因と企業の役割
 
日本教育再生機構顧問 イエローハット椛樺k役
鍵山秀三郎氏
 
 今、子供にかかわる犯罪が非常に多くなり、かつては考えられなかった犯罪がたくさん起きるようになった。子供が犯罪を起こす元は大人が作っている。子供が一人で悪くなることはない。原因は、余りにも世の中全体が能率・効率というものを度の過ぎた追求をするようになったからだ。大人から子供まで大変厳しい競争にいつも晒されています。小さい幼児の頃から競争の渦に巻き込まれて、心の休まる暇がない。家庭でさえ温かい雰囲気が失われた。これが結果的に日本人の美意識・美徳というものを奪った。

  美意識や美徳が失われるとどうなるか。自分の利己心がむき出しになってしまう。利己心をむき出しにして社会生活を行う、あるいは家庭生活を行うことになったことが今の社会の崩壊に繋がっている。この利己心をむき出しに生きることは恥ずかしいことで、本当はみっともないことだが、それが今や当然になった。人に主張することはあっても自分は実践をしない。原因はたくさんあるが、特に企業、私も企業人の一人として反省するのは、度の過ぎた能率・効率の追求をしたために人の心がどんどん荒れているというのが現状だ。

  また学校の中でも、教わる生徒と教える先生との信頼関係が非常に薄れ、保護者と先生との信頼関係も薄れた。これでは本当の意味でいい教育はできない。しかし、今のままでいけば信頼関係は薄くなることはあっても濃くなることはない。平成4年にスタートした「日本を美しくする会」では、全国各地の学校の施設をお借りして、トイレ掃除をするという活動を今日まで続けてきた。最初の頃は私たちの仲間だけでやったが、そのうち生徒さんが参加し、先生方が参加し、保護者が参加するようになった。県によってはこの三者が一体となって参加するようになった。トイレ掃除を通して先生と生徒との間の信頼関係が回を重ねるごとに厚くなり、保護者と先生との関係もとても良くなってきた。荒れていた学校が見事に更正し、非行に走りがちの少年たちが更正することが方々で起きた。
 
  もちろん掃除だけが全てではないが、やはり環境を綺麗にする、住まいの暮らしの環境を綺麗にする、学びの環境を綺麗にする、会社であれば職場環境を綺麗にするということは、必ず人の心を穏やかにして、広く温かいものにしていくと私は確信している。しかも、人に委ねてやってもらうのではなく、自分の手でやるということ、あらゆる階層を超えて皆で一つの目的に向かっていくこと、こうした実践こそが大きな力を持っていると思う。
 
 
歴史教育と教科書・外交
 
ジャーナリスト
櫻井よしこ氏
 
 今、日本が取り組むべき最も重要なテーマは、一つは安全保障の面で日本の力を付けること、もう一つそれよりもっと重要な問題としての教育の問題がある、というのが私の考えです。人の心というものは、どんな外交の言葉にも、どんな安全保障上の武器にもまして強いものがある。日本をきちんと維持して守っていく国民の心があれば、本当は、日本は未来に向けて余り心配することはない。だが、このところの日本人の様子を見ていると少し不安になることがある。

  これほどの好条件の下に暮らしている民族は今、世界のどこにもいない。経済的に豊かで、社会は安全で、人間同士は基本的に誠実で優しいし、この社会で売っている製品は非常に技術面で優れており、気候も悪くはない。ハンチントンは、世界を八つの文明に分けてこの日本を「日本文明」とした。世界の他の文明圏は、キリスト教文明も中華文明もイスラム文明も多くの国々が作ってきたが、「日本文明」のみは日本一人が作ってきた。歴史を辿ってみると、もともと日本と日本民族は古代の歴史からみても、千数百年も二千年近くもほとんど鎖国状態で独自に生きてきた。それがハンチントンのいう「日本文明は日本ただひとりが作ったものである」ということであり、じっさい日本人が作り上げてきたものは素晴らしいものがある。

  日本人は、現在の状況に満足しているが、そこに外国が入ってくると途端に思うようにいかなくなる。どうして靖国神社に行ってはいけないのか。東シナ海に他の国の船がやってきて我が国の船は行くことができないのか。日本の領海なのに何故日本の漁船が漁をしていたときに、そこに海上保安庁の船も海上自衛隊の船もおらず、ロシアの船に襲撃されて漁船員が死ななければならないのか。北方四島は、何故プーチンさんは一島も返してやらないと威張っているのか。全然分からない。日本国内できちんとした議論がなされていない。そうした議論をしてはならない雰囲気がある。また、日本人が国内の生活に充足すら感じ、諸外国との関係についてあまり考えなくても生活がとてもハッピーである、ということが原因にある。

  もう一つ、非常に大きな心の傷だと思うが、我が国はあの第二次世界大戦でアメリカに敗れました。たった一度の敗戦ではあったが、その占領時代に、私たちはその前の歩みを忘れなさいと言われて忘れました。また、忘れるように努力をさせられた。だが、この捨て去った記憶の中に、私たちが受け継ぐべき民族の宝というものがたくさんあった。どんなにこの国が、たった一人で、百数十世代もの間、素晴らしい文明を築いてきたか。素晴らしい倫理観を築いてきたか。経済も数学も、鎖国の時の日本のレベルは世界一だった。本当に奇跡のような国家を作ったが、それを全部忘れさせられ、また忘れてきたので、外に対して自分たちの主張をすることができなくなった。自信がなくなってしまった。
 
  数年前にOECD39ヶ国の15歳の世界各国の約60万人の子供たちの調査があったとき、各教科において、いわゆる論文形式の質問に対して日本の子供は異常なほど回答率が低かった。白紙で回答する日本の子供は科目によっては42%を示した。他のどの国も二ケタはいかない。だいたい2〜3%、4〜5%が白紙回答ですが、日本の子供はそれだけ高かった。これは頭が悪いせいでもなんでもない。心がひ弱なせいだ。自分の考えていること、そのことを発表してもいいものかどうか、発表する価値があるかどうか、自分の考え方、自分の価値観、自分の立ち位置について、全く自信がないから子供たちは書けない。
 
  何故自信がないのか。日本人はとても満足している。物にもお金にも全てにおいて。全てが揃っているのに自分の主張ができない。それは自分のルーツが分からない根なし草だからであり、根なし草がいくら着飾っていても、多少のものを持っていても何の役にも立たない。これは子供の問題だけでなく大人の問題であり、国家の問題でもある。私は教育の根幹において学力の充実とともに日本人として心の育成というもの、よき日本人を育てるという意味での歴史教育、幾百世代もの私たちの先人たちが、一体どういう生活をして、どう生まれ死んで、お互いに助け合って、素晴らしい社会を作ってきたのか。日本国のなし得たことがどれほど並外れて優れたものであったか、そういったことを教えることが、とても大事だと考えている。
 
 
安倍教育改革に望むこと
 
日本教育再生機構理事長 高崎経済大学教授
八木秀次氏
 
 安倍政権には多くのことをやってもらいたいが、教育改革、教育再生にあたっては優先順位をつけて今すぐできることを行ってほしい。その優先順位の第一位か第二位は、やはり「ゆとり教育路線」からの決別を教育再生会議として宣言をしてもらいたい。その上で中教審に対して、早期に、それも時期を指定してこの「ゆとり教育路線」の見直し、即ち授業時間数の確保と学習指導要領の改訂、先ほど伊藤さんからもお話がありましたけれども、学習内容の分量を増やすということを求めてもらいたい。
 
  昔から経済格差というものが日本にはある。しかし今日、この「ゆとり教育」のために経済格差が教育格差に繋がっている。経済的に余裕があって、塾やあるいは私学にいける者は学力を確保できるが、公教育だけを受けている者には十分な学力が身につかない。また塾や私学がたくさんある都市と地方との間に、やはり教育格差が生じている。
 
  安倍首相の政権理念である「再チャレンジ」いう意味でも、「ゆとり教育路線」からの決別を早期に求めてもらいたい。日本の近代の力というのは、これはどんな家庭に生まれようが、公教育だけ受けて十分に学力をつけて世のリーダーとなりえたということだ。しかし、それが中々難しくなってきている。「ゆとり教育」のために階層化が進んでいる現状もある。これを早期に是正していただきたい。
 
  次に、文部科学省あるいは地方では教育委員会と、日教組などの特定の教職員組合とが裏でがっちり手を握っているという「教育界の五十五年体制」を打ち壊すべきだ。安倍首相は、自民党幹事長あるいは幹事長代理時代に、山梨県教職員組合の問題に熱心に取り組まれました。教職員組合のメンバー、現場の教員ですが、彼らが政治活動を行っていることに対して、これは法令違反だと突きつけた。政治活動、教員の政治活動の禁止など、法令順守の徹底化を求めてもらいたい。教育界から政治主義を排除してもらいたい。これらを行うためサッチャー政権が最初に行ったのは学校の徹底した情報公開だった。また、現在議論されている教員免許の更新制、学校評価制、それから学校選択制の導入も、例えば品川区などではかなりの効果を挙げている。教員の意識が変わり、教員が政治活動を行わなくなり、教育活動に専念するようになった、という成果が上がっている。
 
  三番目に、教育改革は教育の世界だけではうまくいかない。社会全体が取り組むべきであり、また教育改革、教育再生は社会全体への世直しのメッセージとすべきだ。企業が効率化、能率化を求め、それが日本人の心を変化させて、家庭や地域からまず父を奪い、今、母をも奪おうとしている。企業が働き方を見直し、また社会が働き方を見直すことで、子供たちの教育に親がもっと関心を持てるような社会づくり、これを目指してもらいたい。
 
  これは文部科学省だけでできることではない。経済産業省も厚生労働省も、あるいはそれを統括する官邸も一体となって進めてほしい。また、その中で優先順位をつけて、具体的に実行できることからまず実行に移してもらいたい。
 
 
 
【第二部 提言T 一般公募者からの提言】
 
 
 
 
 
基礎学力と規範意識の定着のために
 
元中学校校長
柳川達郎氏
 
 学力の低下の第一の原因は教科時間の削減にある。総合的な学習時間や選択教科の学習は、趣旨は大変良いが、人間形成にとってこの時期に最も必要なものは基礎学力の定着だ。総合的な学習の時間と選択教科の拡大を改めて、通常の教科教育の時間を増やすべきだ。特に国語と数学の時間が削減されたことは、学力低下の致命的な原因である。現在の心理主義教育と道徳主義教育の二つの教育指導のうち、心理主義教育指導ばかりで道徳主義教育指導が大変弱くなっている。この二つのバランスを欠いた指導を続けていると、理由があれば少しぐらいならやっても良いという安易な受け止め方を子供はしてしまう。
 
 
国語教育の見直しを
 
日本漢字教育振興協会理事長
土屋秀宇氏
 
 現在、ひらがなの方が漢字より易しいという前提で教育しているが、石井式漢字教育よれば、幼児から小学校低学年の子どもたち、さらには自閉症児や知的障害児はカナよりも断然漢字を好む。私たちの教育方法では、幼稚園の子供たちがはじめから漢字、カナ文字で書かれた物語や百人一首や俳句などの和歌、あるいは童謡、唱歌、さらには論語や漢詩などを楽しみながらどんどん読み、小学校入学以前におよそ3千から4千近くの語彙を身につける。それに比べて、小学生は6年間で僅か1006という漢字しか学べない。現行のひらがな優先で、豊かな語彙の教育に不都合な仕組みを一刻も早く改善していただきたい。
 
 
数学教育の改善を
 
数学教育研究者
菊池乙夫氏
 
 無償配布の影響があると思うが必要な内容が教科書に盛られていない。中国では図解の変換、これは模様を書くのに大事で小学校の低学年から中学校にかけて指導されているが、日本の小学校では一切無い。確率統計の問題も、今の日本では統計が4年生で少し出てくるだけ。確率は中学2年でやっとでてくるが、名前を知らせる程度の内容。中国では小学校1年生から中学にかけて系統的・体系的に指導されている。日本が科学立国として立とうとするならば、指導要領や教科書の欠陥は早急に是正されるべきだ。
 
 
母親たちの不安、「ゆとり教育」の弊害
 
主婦
川口育子氏
 
 私の娘はゆとりの一期生で、教えてもらわなさ過ぎて、親としてはとても不安だ。授業を見ても「ゆとり教育」ではなく「ゆるみ教育」としか思えない。ほとんどの子供たちが暇そうにしている。子供は朝起きてから一番いい時間を学校で過ごすわけで、親としてはもったいない、行かせたくないとさえ思う。数人の荒れた子が多数の学習権を奪っている。ビジョンを共有する教師集団がきちんと対応しなければ、一人の先生が全部をやるというのは無理だ。また、授業をわからない子に合わせた時に、わかる子は好きな教科も嫌いになる。
 
 今までゆとり教育を受けてきた子供は、その分をどこで取り戻すのか。フリーター世代のように置いていかれてしまうのか。あきらめなければいけないのか。しかし、これは本人の責任ではない。国が定めた教育課程の中で取り残された世代ということは絶対にあってはいけない。せめて、ゆとり教育一期生が中学に入学するまでに、自由に学校が選択できる制度が構築されることを本当に望む。4人の子どものお母さんは、私学に行かせたくても経済的に無理で、不安な公立にしか行かせられないと私に訴える。4人も生んで、しっかり育てて、頑張っているのに最終的に学校という環境は、お金で買わなくてはならないとは矛盾だらけだ。子供の数が多いほど希望する教育が受けられるようなシステムが完成すれば、少子化対策の一縷になるのではないかと考える。
 
 
宗教情操教育はなぜ大切か
 
団体役員
稲貴夫氏
 
  現行教育基本法は、第9条第1項・第2項を素直に解釈すれば、宗教情操教育は子供の成長段階に合わせた十分な配慮のもとに、教育現場において積極的に取り組まれるべき課題であるはずだ。ところが現実は、政教分離を厳格に解釈する雰囲気の中で、神話伝承や地域に密着した祭礼行事までもが宗教色を含んでいるとの理由から教育現場から排除される傾向がある。しかし、宗教や伝統は一部の人間のみが関与する特殊なものでなく、日本人が人間と自然との関わりを根源的に考えることにつながっており、宗教は生命に対する畏敬の心を育み、生きる力の源泉ともつながっている。
 
 
親たちに育児学習制度を
 
インターナショナルスクール幼稚園園長
横田綾子氏
 
  子育て指南書の作成をはじめとする乳幼児の親たちへの育児学習制度の構築を、私の提言としたい。子育て中の親御さんたちの不安をなくし、我が子の育児を楽しいと感じられるようにするため、国が投資して育児指南書を作成し、親となった人が指南書を学習するという制度を作ることが必要だ。これら親の学習制度化によって子供の心が理解でき、不安が軽減され、迷わずわが子に接することが出来るようになれば、育児が楽しくなる人が増えて、子供を生み育てたいと思う若い人たちも増えて、少子化問題の解決にもつながる。
 
 
 
【登壇者の討論による討論 〜提言発表を受けての意見交換〜】
 
 
櫻井 学習指導要領の精神は「教えないこと」ことだ。日本の子供たちはあまりに教えられていない。それから「親になる教育」がこの国にはない。アメリカでも60年代・70年代、今の日本と同じような問題がおきた時、How to be good parents 、いかに良い両親、親になるかということを全国的に展開した。いわゆる立派な親にための親業教育の制度化は、とても大事なことだ。
     
三好 教師はしっかり教えることをためらってはならない。最初の教師の初任の学校で教えないことがいいと思った瞬間に、その先生は30年間、いわゆる駄目教師になる第一歩を踏み出してしまう。
     
伊藤 学校で子供達は競争してはいけないという何か洗脳されたような教育を受けているが、学習塾では本当に一生懸命頑張って努力した生徒が報われるようにしている。本当の勝負をした時にはその勝ち負けの意味がわかる。子供達が自分達と相手との違いを理解できるし、相手を思いやる精神が逆に生まれてくる。
     
八木 一般で通用することが、どうして学校で通用しないのか。世間とは全く異なる領域が我が国の教育界にはあるという感想を持つ。
     
小川 体験学習では、実際に子供たちが泳いでいる魚を手でつかんで、ぴくぴく動くのをしめて自分で調理して食べる。それで初めて「いただきます」の意味を教えたら、今までご飯を残していた子供が、母さん、実はこういう勉強したのだと、残さずに頑張って食べると言って、残さないようになった。
     
八木 今の子供達が気の毒だと思うのは、鍛えられる場がない。規範意識を身につけるということでも鍛えられる場がない。より高いステージに上る機会を奪われている。
     
渡辺 親不孝は心の問題だが、現代は目に見えるものしか評価しない。目に見えないものの評価を今しない。今、女性にとって良い時代でもあるが、受難な時代でもある。選択肢の幅が広がったというけれども、結婚してもいいし、しなくてもいい。子供生む自由もあるし、生まない自由という言い方もあり、この中で女性が迷っている。二者択一できるような時代であればいい親にもなれたのかもしれないが、あまりにも選択肢の幅が広がっていることで、親たちは迷って、親になりきれない。何が正しくて、何がおかしいのかをはっきりといえることが大事だと思う。
     
伊藤 学校の社会は費用対効果をあまりにも認められなさすぎた。塾では、お金を頂いた分だけそれをお返ししようという当たり前の基本的なことをやっている。制度だけでなく、そういうスピリットをも一緒に入れもらう必要がある。
 
 
【閉会の挨拶】
 
 
閉会の挨拶
 
日本教育再生機構顧問 元東京都教育委員
石井公一郎氏
 
  さきほどの第一部の中で、PTAの元会長の渡辺さんが、男が男らしくない、女が女らしくなくなり、それが高校生のグループの態度に如実に現れているということを伺いましたが、これはもう日本人にとって大きな危機であります。男性にとって女性らしい女性がいなくなることは、最大の不幸ではありませんか。同様に女性にとっても同じでございましょう。それから第一部の中では公教育への不信のアンケート、公教育と塾と比べてどちらが学力を増すかということで、親の意見では圧倒的に70パーセントぐらいの塾の方が勝っているということがはっきりと明示されました。また、第二部においての話題の中心は「ゆとり教育」でしたが、八木理事長の言葉を借りれば子供達は鍛えられることを心の中で希望しているが、それをかなえられていないこの現実をどう見るかと。これは大きなテーマでございます。
 
  本日お集まりの皆様には、それぞれ胸に深くお持ちの思いや意見をそれぞれの属する社会において大いに発言していただきたい。民主主義の社会においては絶対権力はありませんから、人々が大いに語り、議論の輪を広げていく他に解決の道はありません。皆さん大いにがんばり、若き八木秀次君をリーダーとする、この日本教育再生機構を盛り上げていこうではありませんか。ありがとうございました。(拍手)
 
 
 
 
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